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天才ぴかりん・作

− おいでませバナナフラッペ村 −

    

それは、とある日のおばけちゃん達の通う学校での会話からはじまりました。
「ねぇ、もうすぐ長い連休だよね〜。」
橙色をしたおばけのみけが言いました。
「みんなの予定は?」
おばけちゃんが言うと
「オレ、海と山に行くぜ。まろ姉ちゃんと。」
ねえねえ、ももさ〜ん。 「私は魔女修行のためにおばあさまの家に行くわ。」
「ぼくもおばあちゃん家行くよ。」
たまと、すすと、みけが答えました。
「へぇ〜。・・・あれ、ももさんは?」
おばけちゃんは、一人答えなかったももさんに聞きました。
「え?私?・・・まだ考えてないけど。」
ももさんの答えを聞いて、みけはつまらなそうな顔をしました。
「どうせ、家で勉強とかするつもりなんでしょ。」
「まあ、やることがなければそうなるわね。」
ももさんは言いました。
「でもせっかくのお休みなんだし、どっか行ったりしたらどう?」
おばけちゃんが提案しました。
「そうだよ、お前いっつも勉強してばっかりじゃんか。ちょっとくらい遊びに行けよ。」
たまも、おばけちゃんの意見に賛成です。
「そうだわ。貴方、バナナフラッペ村に里帰りしたら?一か月以上の休みだもの。時間は十分あるわ。」
すすがいいことを言いました。
ももさんはもともと、ある国のバナナフラッペ村という所からきた留学生でした。
故郷のバナナフラッペ村は遠いので、ちょっとやそっとじゃ帰れなかったのです。
でも、この休みを利用するなら大丈夫。
すすの言ったように時間はたっぷりあるのです。
たまには村に帰るのもいいかな、とももさんは思いました。
「そうしようかな。」
ももさんは呟きました。
「楽しんできなよ。」とみんなに言われ、ももさんは、バナナフラッペ村に帰るのがとても楽しみになりました。

一週間後、連休が始まりました。
その間、学校はお休みです。
ももさんは早速出かける準備をして、最寄りの駅に向かいました。
駅に着くと、すすが電車を待っているところに出くわしました。
「あら、今からお出かけ?」
ももさんに気づいたすすが言いました。
「そうだけど・・・。」
「奇遇ね。私も今から出かけるところよ。」
「そうみたいね。」
見慣れない真っ黒の鞄を待っているすすを見て、ももさんは言いました。
「よかった。一緒に行きましょう。すすがいるなら心強いし。」
ももさんが言うとすすは笑いました。
「それはこっちの台詞よ。」
しばらくして、電車がやってきました。
ももさん達は一緒に乗りましたが、すすは六つ目の駅で下りました。
ももさんは終点まで行くので、ここで二人はお別れでした。
「里帰り、楽しんで来なさい。」
「あなたも修行頑張ってね。」
すすは小さく手を振って電車を下りました。
バナナフラッペ村に行くには、この電車の終点まで行き、また別の電車に乗り換えて更に終点まで行きます。
その後、二時間ほどバスに乗り、バス停から更に二、三時間歩くのです。
それを経てももさんはやっと村に着きました。

久しぶりに帰ってきたバナナフラッペ村は、昔と何も変わっていませんでした。
怪しい実験を繰り返し、変なパンを製造するこの村一人気のパン屋さん。
がらくたばっかり売っている貧乏じいさんの家。
村の中央に高々とそびえ立つバナナ搭。
そして、ももさんの昔からの親友が住んでいる村長のお屋敷。
ももさんはまず、村の外れに住んでいる長老を訪ねました。
長老はスバルディア・レナット老人といい、村人からはレナット老人と呼ばれていました。
とても良い人で、大人から子供まで、みんなに好かれていました。
「ただいま帰りました!レナット老人!」
にょ!レナット老人かわいいにょっ! 「ほっほっほ。よく帰ったの。」
超長いひげと杖を持っているレナット老人が、ももさんを出迎えてくれました。
ももさんの留学のためのお金を出してくれたのは、実はこのレナット老人でした。
何故、ももさんの親じゃないかって?
・・・お金ないんだよ!!
「留学先はどうかね?」
「とても良いところですよ。」
「ほほぅ、そうかい。あの国は優しいおばけ達が住んでいるそうじゃな。」
「良い方たちですよ。」
「ところで、今日はこの後どうするつもりじゃ?」
「今日はもう遅いので家に帰ります。明日は、村長の家に行こうと思います。」
「そうかぃ、そうかぃ。」
ももさんとレナット老人はたくさん話をしました。
しばらくして、ももさんは家に帰りました。
「ただいま。」
ももさんが玄関に立つと、家の奥からももさんのお母さんが出てきました。
「ももちゃ〜ん!おかえり〜♪」
そう言ってももさんの母、ピイチさんはももさんに抱きつきました。
「会いたかった〜。寂しかった〜。」
「はいはい。」
ももさんは抱きついたままのピイチさんを引きずって、部屋に入って行きました。

次の日。
ももさんは予定通り、村長の家を訪問しました。
村長は、まあそこそこ金持ちなおじさんでダントコスタァム氏といいます。
その村長の一人娘がももさんの親友、カナトリーアさんです。
大きな門をくぐり、呼び鈴を鳴らすとカナトリーアさんが出てきました。
「久しぶりね、もも。おかえりなさい。
レナット老人から話は聞いているわ。」
カナトリーアさんはももさんを屋敷に招き入れました。
ダントコスタァム氏は燕尾服です。 「おお、よく来たねぇ。」
家の中にはダントコスタァム氏もいました。
「お久しぶりです。」ももさんは笑顔で挨拶しました。
「まあ座って。お茶でも飲みたまえ。」
ダントコスタァム氏はももさんを椅子にすわらせようとしました。が・・・。
「待って下さる?お父様。」
カナトリーアさんが止めました。
「なんだい?ももさんはここで私らとお茶を・・・。」
「いいえ。ももはわたくしの部屋で楽しくお話しますの。」
「そうか。じゃあ私も部屋に一緒に行こう。」
「久しぶりなんですから話くらい二人きりでさせて下さいな。」
「私だって久しぶりだ。」
「ほほほ、何をおっしゃるの。お父様と私とではももとの親密度が違いますのよ。」
「あ、あの、二人とも・・・。」
「ほら、ももだって早く決着をつけてほしいんですって。」
「決着が着いたら私とお茶を飲むんだよな?」
「え・・・」
「ももさんを困らせるなんて、一緒にお茶を飲む資格などありませんね。」
「いや、あのね。」
別にどっちだっていいよ、とももさんは思いましたが、
戦いはますますエキサイトしていました。
「いい加減、私の言う事を聞いたらどうなんだ。」
「お父様こそ、いつまでも大人げない。」
この戦いこそ、いつまでも終わらないのでももさんはそろそろ終らせる事にしました。
「二人とも、いい加減にしないと帰りますよ!?」
ぴたっ。と、二人はももさんのその一言で争いをやめました。
代わりに、うるうる目で「帰らないで」と訴えていました。
その時、部屋にあった電話がリリーンと鳴りました。
ダントコスタァム氏は電話に出て何か話していましたが、すぐに切って出かける準備をし始めました。
「お出かけですか?どちらへ?」
カナトリーアさんが聞きました。
「村長の集まりが今日に決まったそうだ。行ってくるよ。」
「お仕事では仕方ありませんわね。行ってらっしゃいませ。」
「行ってきます。」
そう言うと、ダントコスタァム氏はしぶしぶ村長の集まりとやらに出かけて行きました。
「ほほほ。これでももと二人きりですわ。」
とカナトリーアさんは思いました。
「じゃあ、もも。私の部屋へ行きましょう。」
ももさんとカナトリーアさんは二階に上がりました。
「どう?久しぶりのこの村は。」
カナトリーアさんはももさんに聞きました。
「なんにも変わってないのね。ちょっと安心したかな。」
ももさんが答えると、カナトリーアさんは「そう」と微笑みました。
そして二人は夕方までずっと話をしていました。
「あ、じゃあ私、そろそろ帰るわね。」
「え、もう?」
カナトリーアさんは時計をちらりと見ました。
6時ちょっと前でした。
「早く帰ってあげないと・・・お母さんが寂しがっちゃって。」
ももさんはやれやれと首を振って言いました。
どこへ行っても人気のももさん。
カナトリーアさんは門まで見送りに行きました。
すると、ちょうどダントコスタァム氏が帰って来たところでした。
「おかえりなさいませ。」
カナトリーアさんが言うとダントコスタァム氏は二人を交互に見て言いました。
「ももさんは帰るのかね?」
「はい。お邪魔しました。」
「ガビィン!全然ももさんとお茶飲めなかった。」
とダントコスタァム氏は思いました。
「では、またきてくれたまえ〜。」
ダントコスタァム氏は家の中に去って行きました。
「どうかされたの?」
へろへろと去って行ったのを見て、ももさんは言いました。
「お仕事で疲れたのでしょう。ほほほ、ほっとくのが一番。」
カナトリーアさんは笑って言いました。
「じゃあ、またね。」
ももさんはカナトリーアさんの家の門を出て行こうとしました。
すると突然、走って来た子供にドーン!とぶつかりました。
「ととと・・・。」
ももさんはよろけましたが、運動神経がいいのですぐに元に戻りました。
が、ぶつかってきた子供の方はそうはいきませんでした。
「うぎゃぁっ!」と叫んで門の横の壁にぶつかりました。
「・・・・。」
「だ、大丈夫?」
ぐるぐると目を回しているその子にももさんは聞きました。
「あれ・・・この子、誰?」
バナナフラッペ村は小さな村なので知らない村人なんて滅多にいないのですが、ももさんはこの子供を知りませんでした。
いえ、子供というよりガキって感じでしたけど。
「この子はペパロ二よ。」
カナトリーアさんが言いました。
「ペパロニ?」
「この子の名前よ。ももが知らないのも無理ないでしょうね。ももが留学した後にこの村に来たんですもの。」
ペパロニはまだ目がぐるぐるしています。
「突然やって来たと思ったら、レナット老人のところに住み着いて魔法使いになるための修行をしているみたいなのよ。でもこうやってものにぶつかるのも好きみたいですわね。」
ペパロニ好きにょ〜♪ ほほほ、とカナトリーアさんは笑いました。
「へぇー・・・家出少年かしら?」
そうももさんが誰に聞くでもなく呟いたとき、ペパロニが復活しました。
「家出じゃない!旅だ!修行の旅っ!!」
急に起き上がったと思ったら、ペパロニは叫びました。
「修行の旅ぃ〜?」
「そう!そしてたどり着いたのがこの村さ!」
「へぇ〜。面白い子ね。一つ目だけど、私達と同じ種族なの?」
「違う種族だったら、ただのバケモノよ。一つ目なんて。」
カナトリーアさん、サラッとひどい事を・・・。
「ふぉっふぉっ・・・。何を騒いどるのかね?」
ちょうどいいのか悪いのか、レナット老人が現れました。
「ペパロニの事なら心配ないぞ。おめーさん達と同じレモメローン族じゃ。」
レナット老人は言いました。
誰も心配なんてしてないよ、とも思いますがそこはほれ、突っ込んじゃあいけません。
「ふぉっふぉっふぉっ。ところでペパロニはどこじゃな?」
「あれ、さっきまでここに・・・。」
気がつくと、ペパロニの姿が見えなくなっていました。
「大丈夫ですわ。私が捕まえておきましたから。」
そう言ったカナトリーアさんの足下を見ると、ペパロニが踏まれていました。
「さすがじゃ、カナトリーア。それではそいつを連れて帰るとするかの。」
レナット老人はペパロニをガシッと掴むと、
そのまま飛んで帰って行ってしまいました。
ももさん達は、レナット老人をしばらくぼ〜っと見ていましたが、急に我にかえりました。
「私も帰らないと。またね、カナトリーア。」
「ええ、ごきげんよう。」
ももさんが家に帰るとまたピイチさんがやってきて抱きつきました。
「おかえり〜ん。」
ああ、これからずっとこんな感じだったらちょっとやだな。
とピイチさんを引きずりながらももさんは思いました。

へつづく・・・

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