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天才ぴかりん・作

− おいでませバナナフラッペ村 −

    

さて。
ももさんはこの村に何週間か滞在する予定なのですが、一日一日をいちいちお伝えしても仕方ないので、特別何かあった日だけお知らせしようと思います。

三日後には、村中でももさんの帰還を知らない者はいなくなりました。
この日、ももさんはカナトリーアさんの家にあるプールで村の子供達に泳ぎ方を教えていました。
温水プールなので、一年中いつでも使えます。
特にわがままを言う子もいず、みんなすぐに泳げるようになり、水泳を楽しんでいました。
ももさんの教え方がうまかったのかもしれませんが。
プールサイドには、その光景をのんびり見守るカナトリーアさんの姿がありました。
ももさんは休憩するためにプールから上がろうとしました。
すると突然足音がして、プールの部屋の扉が勢いよく開きました。
「ももさんが帰って来てるんですって!?」
開いた扉の向こうにはひらひらの衣装を着たお嬢さんが立っていました。
ペペロニアーナ登場「お〜ほほほほ・・・!」 みんなはあっけにとられてその人を見ていました。
「ペペロニアーナ?」
ぼけっと見ていたももさんが呟きました。
そう、それが彼女の名前です。
隣町に住む有名な金持ちのお嬢さんです。
あー、こんな人っているよなぁという感じです。
そして、昔からももさんとカナトリーアさんを
勝手にライバル視していました。
勝手に、です。
「おーほほほほっ。お元気そうですこと!」
そしてこれが得意の高笑いです。
「貴方も元気そうね。」
「私はこのテンションが自慢よ!」
いちいち叫びながらペペロニアーナは喋りました。
「貴方が帰ってきたからには、勝負よ!」
「いきなり勝負って言われても・・・。」
「さあっ!道具は持って来たわ!」
ガシャンとペペロニアーナが出したものは。
「オ、オセロ?」
「そうよっ。私はオセロで貴方に勝った事がないわ!」
オセロに限らず彼女が私に勝ったこと、あったかしら。と、ももさんは思いました。
「さあっ!」
バコーン!!
次の瞬間、ペペロニアーナの頭に木の板が激突しました。
「あ・・・・。」
「痛そ〜。」
「怒るわよ〜。」
ももさん、子ども達、カナトリーアさんの順番で言いました。
「なんだよ、邪魔だから早くどけよ。」
ペペロニアーナさんに木の板を叩きつけたのは、ペパロニでした。
「いっったいわね!なんのつもり!?いきなり!」
たんこぶができた頭をおさえながらペペロニアーナはペパロニをにらんで言いました。
「いきなりじゃねえよ!あんたがつっ立ってて邪魔だったから、殴るぞって言ったんだ。でも無反応だったから殴っただけだ!」
ペパロニも元気よく言い返しました。
「なんですって!?許可なく殴ったのならいきなりですわ!」
「じゃあ今なら殴っていいのかよ。」
「いいわけがありませんわ!」
「あー、何だよもう。うるさいな。」
このままだと一生終わらないとペパロニは思い、まだギャアギャア言っているペペロニアーナを無視することにしました。
「カナトリーアの姉ちゃん、今日は水泳教えてくれるんだよな。」
「ええ。教えてくれるのはももさんですけれど。」
「そうなのか。んじゃ、ももの姉ちゃん、よろしく。」
「キーィィ、私を無視するなんてー!」
一層にぎやかになりました。
そうそう、ペパロニとペペロニアーナは、名前は似てますが、特に血縁というわけでも、仲が良いというわけでもありません。
たった今知り合ったばかりです。
ペパロニはとても物覚えのいい奴だったのですぐに泳げるようになりました。
「うんうん。ペパロニは後から来たのに一番上手になっちゃったみたい。」
平泳ぎを教えていたももさんが言いました。
「まあね〜。」
ペパロニが自慢げに言いました。
「泳ぎなんて後だっていいでしょう!?私と勝負してちょうだい!」
「んー、うるさいなあ。ちょっとごめん。私、あのうるさい人のわがままにちょっとつきあってくるわ。」
ペペロニアーナがうるさいので、ももさんは仕方なく相手をしてあげることにしました。
「さあ!オセロはここよ!」
「うるさいわね、言われなくてもわかるわよ。」
叫ぶペペロニアーナに対し、ももさんは小声で言いました。
・・・・。
三分後、決着がつきました。
ペペロニアーナがガクッと倒れ、床に手をつきました。
「こ、こんなはずでは・・・!」
そう言ってももさんを睨むと
「覚えてなさい!次こそ貴方に勝つわ!ほほほほほー!!」
と叫び、去って行きました。
「なに、あいつ。」
ぷかぷか浮かんでいたペパロニが言いました。
「頭のおかしなお嬢さんよ。」
カナトリーアさんが答えてあげました。
「あの様子だと、またくるぜ。」
「まぁ、昔から懲りない性格だったしね。」
ペペロニアーナがいなくなったおかげで静かになりました。
その後、ももさん達は平和に遊びました。

ある朝。
ももさんは騒がしい物音で目が覚めました。
一体何だと思い、窓から外を眺めて見るとカナトリーアさんの屋敷の方がざわついていました。
「どうしたんですか?」
様子を見るためももさんは外に出て、隣のおばちゃんに聞きました。
「ももじゃあないか!早く行っておやり。こんなとこで何してるんだい!」
「・・・?」
状況がさっぱりのももさんは首を傾げました。
「知らないのかい?村長さん家に魔物が出て人質とってるってよ!」
「なんですって!?」
おばちゃんの話に心底驚いたももさんは、急いでカナトリーアの屋敷に駆けつけました。
家の前には人だかりが出来ていました。
「どいてください!ももです!」
ももさんが叫ぶと、人だかりの中に道ができました。
屋敷はいつもと同じ大きな建物でした。
「魔物だなんて、何年ぶりかしら。」
バナナフラッペ村にはごくまれに山から魔物が降りてくるのです。
しかし、人質をとって何か要求するようなずるがしこい性格の魔物はいなかったはずでした。
「もも、来てくれたの?」
庭の方からカナトリーアさんが現れました。
「カナトリーア、無事だったの?」
ももさんが聞きました。
でも、よく考えたらカナトリーアさんがおとなしく人質になるわけありませんでした。
金持ちだけに、武術も少々たしなんでおられるのです。
「ってことは、人質は・・・。」
「父ですわ。」
カナトリーアさんが答えました。
「私がいけないのです。まんまとお父様をとられて・・・しくじりましたわ。」
それからくやしそうに呟きました。
いやしかし、人質に大人の男を選ぶ魔物も魔物だし、まんまと捕まる村長も村長だとももさんは思いました。
「ま、お父様も悪いですわね。悔やんでも仕方ありませんし・・・。」
やけに開き直るのが早いカナトリーアさんでした。
とりあえずももさん達は人質救出に向かいました。
っていうか、村長なんだから自分で逃げるくらいできてほしいものです。
「どこにいるのかわかる?」
ももさんはカナトリーアさんに聞きました。
「ええ。一階の廊下の突き当たりの部屋よ。」
カナトリーアさんは前の方を指さして言いました。
「じゃあ、行きましょう。早く終らせて・・・ハレルソンのカスタードケーキが食べたいな。さっき起きたばかりでお腹空いてるし。」
ハレルソンのカスタードケーキとは、バナナフラッペ村のケーキ屋で売っている美味しいケーキです。
ハレルソンとは、そのケーキ屋の主人の名前です。
「あらでも、ちょっと高くない?あのケーキ。」
「美味しいものは高いものよ。それに、助けられたらおごってくれるんじゃない?」
ふふふ、とももさんは笑いました。
それ以前に朝からケーキかよ、と突っ込む人が欲しいものです。
ももさん達は人質と魔物のいる部屋の前までやってきました。
「この部屋ね。」
ももさんは扉をゆっくり開けました。
中には魔物が・・・
魔物くんの目から・・・!! ビイィーン!
「ひゃあぁっ!」
部屋に入ろうとしたとたん、いきなり変な光線が飛んできました。
「思ってたより危険だわ。」
光線の当たった床からはしゅうしゅう煙が立ち上っています。
「こんな技使うなんて反則だと思いません?」
ビイィーン、ビィンと人質を抱えた魔物は光線を出し続けています。
ビイィーン!
「ぎゃあぁ!あっぶねぇなぁ!」
「え?」
ももさん達が振り返ると、なぜかペパロニがいました。
「な、なんでペパロニここにいるの!?」
ももさん達はかなり驚きました。
「なんでって、助けにきたのさ。」
自慢気に言うペパロニを見て、カナトリーアさんは呆れました。
「とりあえず他の部屋へ避難よ。」
ももさんの提案により一行は魔物から少し離れました。
「いい?ペパロニ。あの変な魔物は危険だから近づいたらダメよ。」
ももさんはペパロニに言い聞かせました。
「大丈夫だよ。今日は魔法の杖持ってきたからさ!」
そう言うとペパロニは杖を出して見せました。
「レナット老人の許可はとりまして?」
今度はカナトリーアさんが言いました。
「もちろん!万一許可が無くても信頼されてるから心配ないぜ。」
「嘘ばっかりね。あなた、まだまだ未熟な魔法使いじゃない。」
カナトリーアさんが冷たく言いました。
「ちぇ!かわいくねーなー。こういう時は男に頼れよな!」
「無理ね、どうしたら自分より弱い人を頼れるのよ。」
「う゛。」
実を言うと、ペパロニはたいして強くありません。
魔法もあまり沢山の種類を使いこなせるわけではないし、毎回成功するとも限りません。
「それで、どうするの?」
ももさんが言いました。
「ペパロニ、レナット老人に渡しに行く?」
「そんな時間は無いわ。お父様、実は結構体力ないの。早く助けてさしあげないと。」
ぎゃーぎゃーうるさいペパロニはほっといて、さっさと魔物を倒すことに決めました。
「どうしましょっか。」
「そうね。山に帰ってもらうのが一番いいんじゃない?」
さっきの部屋に向かいつつ、ももさんはカナトリーアさんの問いに答えました。
バンッ!!
ももさんは部屋の前まで来ると、勢いよくドアを開けました。
「私が彼を眠らせるわ。」
そう言うとももさんは天秤のお皿のようなものを、重なっている服の間から取り出しました。
ももさんパワー全開!そして左右の手首にぶらさげると、魔物の方を向いて立ちました。
まさに直立不動っていうか、手は横に広げてますけど、きれいな姿勢です。
ももさんは手をゆっくり上下に動かし始めました。
お皿がしゃんしゃんと鳴り始めました。
これは特殊な音で、ももさんのねらった者を、眠らせたりすることができるのです。
音を鳴らしている間はカナトリーアさんが魔物を引き付けてくれていました。
この魔物は最近寝不足だったのか、早めに効いてすぐ眠ってしまいました。
「あら、よく眠ってる。これだと2時間は熟睡してて起きないかな。」
「じゃ、起きない間に私が山に持っていくわ。」
カナトリーアさんは魔物をかつぐと言いました。
「お父様をお願いするわね。」
カナトリーアさんはばびゅんと山に向かって走り去りました。
「大丈夫ですか?」
ももさんが聞くと、ダントコスタァム氏はよろりと立ち上がりました。
「ああ、大丈夫だよ。ありがとう。」
「それは良かった。」
ももさんはにっこり笑いました。
「何かお礼をしないと。」
「ああ、いいんです、別に。」
「しかし、ハレルソンのチーズケーキが食べたいのではなかったのかい?」
地獄耳。とももさんは思いました。
「いいえ、なにかの聞き間違いです。朝からケーキなんて食べません。・・・でも」
ももさんは続けました。
「買ってくださる気があるのでしたら、帰る日にお土産として頂きます。」
「そうかい?じゃあそうしよう。」
そう言うとダントコスタァム氏は疲れたので失礼するよと、自室に向かいました。
ところでももさんがさっき使った天秤のお皿ようなものは、ももさん達のような一つ目のレモメローン族の占い師が使うもので、サラといいます。
アクセントはサにつきます。
決して皿ではありません。
一言で占い師といっても、さまざまな種類の占い師がいます。
サラを使う占い師は、予言者のようになんでも当てる有能な者か、その全く逆かです。
ももさんは留学する前、サラ占い師の見習いをしていました。
今も、いつかはきわめるつもりでいます。
サラ占い師は修行が少し必要で、その修行がめんどくさく大変なので、怠けた者はダメ占い師に、しっかり全過程終了した者は有能な占い師になるのです。
ももさんはもちろん後者です。
ただ、あとわずか修行が残っているので、100%完璧とまではいきませんが、今までの積み重ねがあるのでほぼ確実です。
え、矛盾してる?
気のせいでしょう。
ももさんの国でもその他の国でも、サラ占い師は数少ない貴重な存在なのです。
さて、魔物の一件は一応収まったので、ももさんは家に帰ることにしました。
「おい。おれの存在忘れてるだろ。」
玄関に向かう途中、さっきほったらかしにしたペパロニに会いました。
ただほっとくだけではちょこまか邪魔なので、縄でぐるぐる巻きにして転がしておいたのを忘れていました。
「あっごめんね。忘れてたわ。」
ももさんは急いで縄をといてあげました。
「せっかく応援に駆けつけたってのに邪魔者扱いかよ〜。」
自由になったペパロニがぶーたれた顔で言いました。
「そういえば、魔法で縄抜けとか出来ないの?」
「うぉ・・・」
ももさんの鋭い質問に、ペパロニはピシィッとショックを受けました。
ペパロニに魔法の応用はまだ難しいようです。

へつづく・・・

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