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天才ぴかりん・作

− おいでませバナナフラッペ村 −

    

ももさんが帰るのも3日後に迫った、ある日の正午のことでした。
「ふぅ〜。今日ほど自分の着替えが重いと思ったことはありません〜。」
村の入り口に立つ影は、どさっ!と見るからに重そうな鞄を置いて呟きました。
10秒ほど休憩すると、また鞄をつかんで歩き出しました。
その影は、ダントコスタァム氏の屋敷の前で消えました。
その頃カナトリーアさんは、ももさんを家へ連れて来る最中でした。
「ただいま帰りましたわ。」
「お邪魔します。」
何分後かには、ももさん達も家に着きました。
「あら・・・?」
カナトリーアさんが止まりました。
「どうしたの?」
「ええ、なんだか家の中の雰囲気が―」
違うような、とももさんの問いに答えようとしたそのときでした。
「おかえりなさいませ、お嬢様〜。」
どたばたと足音をたてながら、メイド服を着た女の子が走り寄ってきました。
私がメイドのシュワットですわ〜。 「まあ、ももちゃん!お久しぶりです〜。」
「シュワット、帰ってたの!?」
にっこり笑って挨拶するシュワットとやらに、カナトリーアさんは聞きました。
「私も今帰ってきたところです。」
答えると、3人はリビングに行きました。
シュワットはこの家のメイドさんです。
今日まで休暇を貰って旅行に行っていたそうです。
「えーっ!ももちゃん明後日帰っちゃうんですか〜!?」
椅子に座って話をしていたら、シュワットが立ち上がって言いました。
「そ、そうですけど。」
「じゃあここは、何か楽しいイベントで盛り上げなくては!」
シュワットは、さんざん悩んだあげくに言いました。
「肝試しはどうですか?」
「き、肝試しぃ?」
ももさんとカナトリーアさんがハモりました。
「ようし、決定!みんなを誘って下さいね。私が準備しときますから!」
半ば・・・というか、かなり強引に決まった肝試し大会は、本日の午後九時より開催となりました。
会場は村外れの森です。
集まったのは、ももさんとカナトリーアさん、もちろんシュワット。
そして、ピイチさん、トゥさん、ダントコスタァム氏、レナット老人にペパロニでした。
ペペロニアーナは連絡がとれなかったので誘えませんでした。
誘わなかったのではなく、誘えなかったのです。あしからず。
「それじゃ、ルールの説明をしますよ〜。ここから森に入って、私が用意した祭壇にこの昆布を置いて戻ってきて下さい。」
何故昆布なんだ?と思うみんなに、シュワットは昆布を配りました。
昆布には一人ひとりの名前がぬいつけてありました。
「では、適当に二人ペアを組んで、順番も決めちゃって下さい〜。」
30秒後、全てが決まりました。
一番手はカナトリーアさんとペパロニです。
「暗くて足元危なそうね。」
森の奥の方を見ながらカナトリーアさんが言いました。
「カナトリーアの姉ちゃんと一緒って方が危ないぜ。」
「な・ん・か・言いました?」
「別に。」
二人は仲良く出発しました。
「カナトリーアの姉ちゃん、怖かったらおれを頼れよ〜?」
「何気持ち悪いこと言ってるのよ。あんたこそ大丈夫なの?」
「ふっ!このおれに、怖いことなどない!」
・・・とペパロニが言った瞬間にザザザと葉っぱが揺れました。
「うーわーっ!!」
「ほらみなさい。」
ペパロニはカナトリーアさんの後ろをそろそろとついて行くはめになってしまいました。
8分ほどすると、二人は帰ってきました。
一組目は一応無事に帰ってこれたようです。
では次のペア、行ってみよ〜。
ということで、次はももさんとレナット老人です。
「レナット老人、足下気をつけて下さいね。」
「うむうむ。」
・・・。
何事もなく帰ってきました。
「ふぉっふぉっふぉ。いい散歩になったのう。」
ではさっさと三番目行きましょう。
おびえるピイチさん♪ ピイチさんとトゥさんです。
この二人が出発してから3分ほどたったころ、森から「ぎゃー!」とか「ひょえー!」とかいう悲鳴が聞こえてきました。
「あー・・・。」
ももさんが呟きました。
実はピイチさん、暗いの苦手なんです。
数分後、ピイチさんは疲れた顔で帰ってきました。
隣にいたトゥさんはとっても元気でしたけれど。
「では、私が行って昆布を回収してきますね。さ、行きますよだんな様。」
逃げようとしていたダントコスタァム氏をひっつかむと、シュワットはそのまま森に入って行きました。
・・・。
シュワットは人数分の昆布を持って帰ってきました。
ダントコスタァム氏は行きも帰りも引きずられていました。
「みなさん、お疲れさまでした。楽しかったですねぇ。もしよろしければ、私の手作りアイスなどいかがですか?」
シュワットはどこに隠し持っていたのか、すっとアイスクリームを出しました。
「まあ、おいしそう。」
みんなでアイスクリームを食べて、ついでに集合写真も撮って、その日はお開きとなりました。

数日後、ももさんの帰る日になってしまいました。
帰りは、夜出発して3日ほど気球に乗ると昼ごろに着きます。
ももさんは荷造りを済ませると、気球を扱うバナナ塔に向かいました。
バナナ塔には村の守護神である「クスヴァリー・マロメレーポ神(略してマロ神)」がまつられています。
そして、そこで働いている巫女さんが気球を持っているのです。
「こんにちは。」
ももさんがバナナ塔に入ると、巫女さんは笑顔で迎えてくれました。
マロ神っ!初登場!「いらっしゃい。」
バナナ塔の中は10畳くらいの広さで、真ん中に螺旋階段があります。
ちなみに、3階まであります。
マロ神の本体は1階にまつられています。
そのため1階はちょっと狭くなっています。
「準備は整っていますよ。お乗りになりますか?」
ももさんは少し考えた後、村のみんなに挨拶をしてくると言ってバナナ塔を後にしました。
しかし、いろんな人の家をまわると、上がってけだのお茶飲んでけだの言われてしまうのであっという間に日が暮れてしまいました。
「こんな小さい村なのに・・・。」
ふぅ、とももさんは息をはきました。
疲れていたももさんは一度家に帰って荷物を取り、バナナ塔に戻りました。
バナナ塔にはももさんを見送るために、肝試しに来たメンバー+ペペロニアーナが集まっていました。
ももさんが来たのを見つけると、カナトリーアさんが手招きしました。
「見送りに来てくれたの?ありがとう。」
駆け寄ったももさんはにこっと笑いながら言いました。
カナトリーアさんはうなずくとももさんに封筒を渡しました。
「はいこれ。肝試しのとき撮った集合写真よ。」
ももさんが封筒を受け取るのとほぼ同時に、今度はペペロニアーナが言いました。
「私が写ってなかったので、私の写真も入れておきましたわ!」
ももさんの笑いは微妙な笑顔になりました。
「もっと嬉しそうにしたらどうですのー!?」
「・・・あ、もうそろそろ出発しないと。」
ももさんが言いました。
「待ちなさいよ。」
ペペロニアーナが後ろから呼び止めました。そして、
「貴方が次に帰ってきたときは私が勝ちますわよ!」
びしっとももさんを指差して言いました。
「これ、私の得意なマーブルジャムです。どうぞ。」
シュワットが紫と水色と桃色が入り混じった奇妙なジャムの入った瓶を渡しました。
「また家に来てくれたまえ。」
ダントコスタァム氏が言いました。
「体には気をつけなさい。」
レナット老人が、ふさふさのひげをなでながら言いました。
「また遊ぼうな!」
ペパロニはそう言うと、持っていた杖を空に向かって大きく振りました。
「わ、きれい〜。」
空には、もわわんっとオーロラができていました。
「このために、修行が忙しくなってたの?」
ももさんが聞くと、ペパロニは「ま〜な」と頷きました。
オーロラは20秒くらいで消えてしまいました。
「元気でね。私、来週たくあん送るから。」
ピイチさんが言いました。
なんでたくあんなんだろうと思いつつ、ももさんは頷きました。
「ま、後は父さんに任せなさい。心配ご無用だぞ。」
トゥさんが笑って言いました。
バナナフラッペ村(入口付近) うわぁ、なんか信用できねーと思いつつ、ももさんは頷きました。
「もも。」
カナトリーアさんが呼びました。
「幸運を祈るわ。」
「カナトリーアもね。」
「もちろんよ。」
「・・・じゃあね、みんな。ありがとう。」
お土産を持ったまま、ももさんは気球に乗り込みました。
「気球はいつもの通り、全自動でおばけの町まで着くはずです。」
巫女さんがももさんに言いました。
ももさんが荷物を気球の隅に置くと、巫女さんは気球に火をともしました。
気球はすぐ浮き上がり、そのままバナナフラッペ村を出ました。
カナトリーアさん達は、見えなくなるまでずっと手を振っていてくれました。
ももさんも、見えなくなるまでバナナフラッペ村を眺めていました。

3日後、ももさんは予定通りに到着することができました。
こっちはこっちで懐かしいな、とももさんは思いました。
「あ。」
ももさんは気球を全自動で送り返した後、あることに気がつきました。
ダンとコスタァム氏を魔物から助けたときにもらうことになっていた、あのケーキのことです。
「ハレルソンのチーズケーキ、もらい忘れたわ。」
「何っ!ケーキ!?」
「食べたいぃ〜!」
突然背後で聞こえた声に驚いて、ももさんは振り返りました。
そこには、たまとみけと、すすさんとおばけちゃんがいました。
「おかえり〜。」
みんなが口々に言いました。
ももさんは、ちょっと嬉しくなってアハハと笑いました。
みんなもつられて笑ったので、大爆笑になり、夜の街に笑い声がこだましました。

―ももさんの、里帰りのお話。

おしまい♪

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