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天才ぴかりん・作

− おいでませバナナフラッペ村 −

    

数日後、ももさん達は遠足に行きました。
ももさん達というのは、ももさんとカナトリーアさん、ペパロニです。
最近ペパロニはどうも、ももさんとカナトリーアさんについて行きたいようです。そして・・・
「今日はいい天気ね。空が真っ青。」
「そうね。でも、こういう日こそ修行に励んだ方がいいんじゃなくて?ダメ魔法使いさん。」
カナトリーアさんはそんなペパロニをちょっとからかうのが楽しみなようです。
「ダメなんかじゃねーって言ってるだろ!」
ペパロニはからかわれるたびに怒りましたが、カナトリーアさんにとったらそんなの可愛いもんです。
「ええ、口だけならなんとでも言えるわね〜。」
「なんだよぅ、カナトリーア姉ちゃんだって魔法使えないだろ。」
「あら、じゃあ一戦交えます?」
「・・・いい。」
負けるから、とペパロニは小さくつけ加えました。
カナトリーアさんは意外と強いのです。
この日の遠足は、村のはずれにある丘まで行きました。
その丘は村では「クロッキーの丘」と呼ばれていました。
その辺の丘よりは高く、山よりは低いので、ちょっとしたハイキングなんかにはもってこいの場所です。
ももさん達は丘のてっぺんにある野原で、お弁当を食べようと計画をたてていました。
丘を登り始めて30分ほどたった頃です。
「なー、まだ着かないのかー?」
ペパロニが疲れてしまったように言いました。
「頂上はまだ先よ。」
「体力無いのね、意外と。」
「うー。魔法使いってやつは体力無いんだよ!」
「でもあなたまだ魔法使いじゃないでしょ。」
ほっとくといつまでも終わりそうにないので、ももさんが割り込みました。
モクタンカニ登場!かにかに・・・。 「二人とも落ち着いて。休憩しましょう。」
3人は近くの草むらに腰をおろしました。
「あっ、カニだ。」
ペパロニが草の隙間を覗いて言いました。
クロッキーの丘には、この辺りでも有名で珍しいカニが生息しています。
そのカニは、モクタンカニと呼ばれていました。
「こいつ、高く売れるんだよなー。」
ペパロニはにやりとあやしく笑いました。
「このカニ、ゆでると美味しいのよね。」
カナトリーアさんの目がキラリと光りました。
「二人とも、はやまらないでよ?そのカニ売ったり食べたりしたらだめなんだから。」
二人の危ない様子を見て、ももさんが注意しました。
たしかに昔と違い、モクタンカニはだんだん減ってきているので、むやみに捕まえてはいけないことになっています。
絶滅の危機!・・・とまではいきませんけどね。
「うー。わかってるよ。」
「じゃ、モクタンカニも見れたことだし、行きましょうか。」
短い休憩でしたが、モクタンカニを見たおかげで少し疲れがとれました。
カナトリーアさんとももさんの後を追い、ペパロニは立ち上がりました。
そしてその時、誰も気がつきませんでした。
ペパロニが一匹のモクタンカニを踏んだことに。
また2、30分ほど歩いた頃、ももさん達は子供の集団に出会いました。
それは、隣町にある保育園の園児達でした。
「あら、保育園の・・・。」
「パイ先生だわ。」
ももさんはパイ先生に向かって手を振りました。
パイ先生というのは、保育園の先生です。
「まあ、二人とも。久しぶりね。ももちゃんは特に。」
それに気づいたパイ先生はにこにこ笑いながら、優しく言いました。
パイ先生は昔から優しい口調が特徴でした。
ももさんは隣町の保育園にあずけられていたことがありました。
カナトリーアさんはそんなももさんにちょくちょくついていっていました。
バナナフラッペ村は小さくて保育園がないので、子供をあずけたい時は隣町まで行かなければならなかったのです。
「懐かしいわね〜。今度、保育園にも遊びに来てね。」
「パイせんせー!早くぅーっ!」
「は〜い。それじゃ、呼ばれてるから行くわね。またね。」
パイ先生は微笑んだまま子供たちと共に去って行きました。
「はあ、パイ先生はいつも人気者ね。」
「そりゃ、いい先生だもの。私も好きですし。」
カナトリーアさんがふふっと笑って言いました。
「うー、存在自体忘れられてるぅー。」
ペパロニが悲しそうにひとりボソリと呟きました。
ももさん御一行は、また歩き出しました。
しばらく歩いていたら、芝生のもりもり生えた野原が広がる広場に出ました。
おもむろにももさんが、背負っていたつづらから敷き物を出し、敷き始めました。
ももさんが敷き終るのとほぼ同時に、カナトリーアさんが素早く重石を乗せ、お弁当を並べました。
息もぴったり、あっという間の出来事でした。
「何してるの、座らないの?」
ぼーっとつっ立っているペパロニに、カナトリーアさんが言いました。
ももさんもカナトリーアさんも、すでに座っています。
「へ、だって、お弁当は頂上で食べるんじゃなかったのかよ。」
ペパロニが座りながら言うと、ももさんとカナトリーアさんは目を見合わせて笑いました。
「ふふふ、ペパロニはこの丘に登ったの初めてなのね。」
ももさんが言いました。
「えっ、え?」
よくわからないペパロニはあたふたしています。
慌てているペパロニも、なかなかかわいいもんですね。
「ここが頂上なのよ。」
ももさんがあはあは笑いながら言いました。ペパロニはぽかんとして聞いています。
「この丘の頂上は広いから、広場になってるの。」
「え・・・そうなの?」
ももさんは頷くと「さあ、食べましょう。」と言ってカナトリーアさんが「いただきます」をしました。
お弁当はももさんとカナトリーアさんが作ったもので、色とりどりの野菜や果物やお肉なんかが入っていました。
おにぎりとクロワッサンもありました。
「ずいぶん豪華だね。」
ももさんから割り箸を受け取ったペパロニが言いました。
「まーいいから、お食べなさい。」
どこからともなく、そう声が聞こえてきました。
「もも、何か言いました?」
「え、私じゃないよ。」
「おれも違うぞ。」
3人とも首を振りました。
「じゃ、一体誰が・・・。」
すると下の方からまた声が聞こえてきました。
「ここです。私でございます。」
みんなが一斉に下を向くと、並んだお弁当箱の間に小さな人が立っていました。
「貴方は?」
「私はこのお弁当より生まれた妖精です。心のこもったものには、たいてい私のような妖精がつくのです。」
「そーなのか。」
ペパロニが一人、興味ありげに頷きました。
その次の瞬間、ざざっと風が吹きました。
ぎょっ!! 妖精の体がふわっと浮きました。
風の精の仕業でした。
「わっ。」
「わっ、じゃないでしょう。生まれたばっかりはやること沢山あるんだから。さ、行くわよ。」
「きゃ〜。」
風の精はももさん達に小さく会釈すると、ひょうひょう吹かれて行ってしまいました。
「なんだったのかしら、今の。」
「あっという間だったな〜。」
「ま、気にせず食べましょう。」
そして3人は、お弁当を食べました。
お弁当を食べた後は、食後の運動がてら適当に歩いて丘を下りました。
丘のふもとでカナトリーアさんが言いました。
「もも、明日うちに来ない?昨日の夜、おばあさまから素敵なティーカップが届いたの。」
「ごめんなさい、明日は父さんが帰ってくるらしいから・・・。」
ももさんは残念そうに首を振りました。
しかし、それを聞いたカナトリーアさんは嬉しそうです。
「帰ってくるの!?久しぶりね、お父様に知らせないと。」
「なあ、もも姉ちゃんのとーちゃんそんなにすげえのか?」
ペパロニがカナトリーアさんに聞きました。
「すごいっていうか、あまり帰ってこないから・・・。久しぶりなのよ。お父様と仲もよろしいし。」
「そんなに帰らない人なのかよ。」
ペパロニに聞かれ、カナトリーアさんはう〜んと考えました。
「まぁ、その時々によるけど。平均すると一年に一回くらいかしら。前回は二年くらい前だったかしら。」
「二年前なら、おれも会ったはずだぞ。」
「会って無いわよ。あんた合宿とか言って南の海の方に行ってたんだもの。」
カナトリーアさんに言われ、ペパロニはショックを受けたのか固まってしまいました。
「だったらペパロニも会いにくればいいのよ。」
ももさんが言いました。
「うー。おれ明日から特訓のスケジュールが・・・。」
「残念ね、今までサボってた分があるのだものね。」
カナトリーアさんがふふふと笑いました。
ペパロニは悔しそうにしていましたが、レナット老人の話を聞かなければいけないとかで帰っていきました。
その後で、ももさんとカナトリーアさんもそれぞれ家路につきました。
ももさんのお父さんはトゥという名前です。
お仕事兼趣味で世界各国、いろいろなところに行っているのです。

翌日。
ももさんの家にはカナトリーアさんとダントコスタァム氏が来ていました。
テーブルの上はピイチさんの手料理が並んでいます。
これはももさんも手伝いました。
ひゅうっと風が吹きました。
村の広場の木から葉っぱが一枚ひらりと飛んで行きました。
「そろそろね。」
ピイチさん可愛すぎにょ! ばぁん!!
ももさんが呟いた次の瞬間、ドアが開かれました。
「たっだいま〜っ!!」
トゥさんが手を挙げて笑顔で挨拶をしました。
「おかえりなさい。」
みんなが口々に言いました。
「ご飯にする?それともお風呂?」
ピイチさんが聞きました。
トゥさんが帰って来たとき、ピイチさんは決まってこの台詞を言うのです。
「と、とりあえずトイレっ。」
そしてトゥさんは決まってこう答えるのです。
まぁ、長旅から帰った人としては当然の選択でしょう。
トゥさんはかぶっていたお気に入りの帽子とでかい包みを玄関近くの床に置くと、トイレに向かって走って行きました。
トゥさんが戻ってくると、夕食になりました。
ダントコスタァム氏はベゴベゴ酒というお酒を持ってきていました。
もちろんトゥさんと呑むためです。
ベゴベゴ酒というのは、バナナフラッペ村の近辺に育つベゴベゴという青い果物から作られたお酒です。
青い液体が怪しい、綺麗な色の飲み物なのです。
「ももはあと何日くらいここにいるんだ?」
トゥさんが聞きました。
「2週間とちょっとの予定よ。」
「じゃ、わしはももが帰ってから出発にするかな。」
トゥさんはハハハと笑って言いました。
「そんなに居てくれるの?」
ピイチさんが嬉しそうに言いました。
「うん。なんか、しばらく休めって言われたから。」
トゥさんの仕事は、考古学者とかです。
「とか」ってなんだと言われるのでしたら、ご説明いたしましょう。
実はトゥさん、遺跡探索やら発掘やら好きなのですが、他にもいろんな仕事してるんです。
それは、学校の先生(助手)だったり店番だったりホームヘルパーだったり・・・。
出版社の営業に行ったり逃げた作家の代筆したり農家の栽培を手伝ったりと、さまざまです。
その仕事も、友達の紹介だったり通りすがりの人に頼まれたりと色々なのです。
とりあえず興味があるものはてあたりしだいになんでもやるようです。
その割に、給料がたいしたことないのが難点ですが。
「ハッハッハ。」
ダントコスタァム氏が笑いました。
今夜は楽しい夜になるでしょう。
「ちょっとー!父さん呑みすぎよ!?」
「お父様、二日酔いになりたいんですの!?」
ももさんとカナトリーアさんは注意しましたが、二人ともまったく聞く耳を持っていま
せん。
「もういいわ、行きましょう、カナトリーア。泊まっていくでしょ。」
「ええ。」
こちらの二人はお風呂に入り、さっさと寝ることにしました。

ももさんの部屋の窓の前をばさばさっと鳥が飛び去りました。
朝です。
ももさんは、隣で寝ているカナトリーアさんを起こさないように布団を抜け出しました。
しかしドアを開けるところで、起こしてしまったようです。
「おはよう、もも。」
起き上がりつつカナトリーアさんが言いました。
「おはよう。もう起きる?」
「ええ、ももが起きるなら。」
二人は部屋を出て、リビングへ向かいました。
リビングにはダントコスタァム氏とトゥさんがいました。
「あぐあぐ。頭痛がするよ〜。」
トゥさんがテーブルを拭きながら嘆いていました。
「これ片付けたら終りだから頑張ろう。」
ダントコスタァム氏が瓶の入った箱を運びながら言いました。
二人とも二日酔いのようです。
「だから申し上げましたのに。・・・無様ですわね。」
カナトリーアさんが目を細めて言いました。
「お、もも。カナトリーア君。起きたんだね。」
二人に気付いたトゥさんが言いました。
そして昨日持っていたでかい包みを運んできて手招きしました。
「ちょっとこっち来なさい。」
「な、なに?」
「いいから、いいから。」
いかりのももさんにょ。 怪しみながらも、ももさん達は近づきました。
「お土産だよん。」
包みをほどくと、トゥさんは笑顔で言いました。
包みの中には、綺麗な模様の彫られた花瓶とお皿、小さな宝石のついた腕輪と、青白く光る石のついた首飾り、透明な素材で作られた時計が入っていました。
「カナトリーア君には腕輪を、ももにはこっちの首飾りをあげよう。」
トゥさんが渡そうとすると、ももさんが止めました。
「待って。その飾り物、どこで手にいれたの?」
「どこって、こないだまで行ってた遺跡の―」
トゥさんははっとして口を閉じました。
「またやったのね。本当に手癖が悪いったら。返してきなさいね。」
トゥさんは遺跡などの仕事先で気に入った物があると、持ってきてしまう癖があるのです。
悪気が全くなく堂々としているので、仕事仲間も気付きません。
っつーか、泥棒だろ。って感じもしますが、大目に見てやってください。
本当に、悪気ゼロなのです。
なんとな〜くいいなと思ってたものを、いつの間にか持っていた・・・みたいな。
前にも何度かこういう事があり、その度にトゥさんはももさんに叱られていました。
「カナトリーア、あれは盗品よ。受け取らないでね。」
ももさんがカナトリーアさんに言い聞かせました。
「ちぇ・・・。」
トゥさんはしぶしぶ品物達を包み始めました。
しかしなぜか透明な時計だけは残しています。
「その時計はしまいまはせんの?」
カナトリーアさんが聞きました。
「それは本当にもらった物なんだ。」
トゥさんは包みをぎゅっとしばりながら言いました。
「本当に?」
ももさんは怪しく思いました。
「ああ、本当だよ。じゃあこの時計をあげようか?」
ももさんは少し考えて首を振りました。
「私じゃなくてお母さんにあげたら?」
ももさんの考えになるほどと思ったトゥさんは、手をポンとたたきました。
「そうだな、そうしよう。」
トゥさんはピイチさんの部屋へ飛んで行きました。
こんな感じで、トゥさんの歓迎会(?)はそうぞうしくも幕を閉じました。


へつづく・・・

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